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塩原JCT収録作品セルフライナーノーツその1「笑の太字」

更新日:2019年1月19日

この世で最も「三谷幸喜」という単語が頻出する、単位時間辺り三谷量最大作品。その値なんと0.5三谷/min!三谷幸喜氏の傑作二人芝居『笑の大学』をめぐって、創作とは何か?オリジナリティとは何か?にまで切り込む(ようにも見える)アガリスクエンターテイメント史上No.1の問題作が初の再演!

『笑の太字』を上演したのは2016年のこと。

前年度のサンモールスタジオ選定賞の最優秀団体賞に選んで頂き、その副賞として頂いた劇場の一週間使用権で何を上演しようか?というところから始まった興行でした。


同じく前年に開催された黄金のコメディフェスティバル2015にて、死に物狂いでグランプリを勝ち取った作品『七人の語らい/ワイフ・ゴーズ・オン』の再演をしよう、というのはすぐに決まったけれど、同作は45分の中編作品だったので、ひとつの興行を行うなら新しくもうひと作品、中編を作らねばということで産まれたのがこの『笑の太字』でした。


当初は新劇団員となった熊谷有芳、前田友里子のコンビで作られる予定の二人芝居だったものを、のちに劇団内で4チーム作り、4バージョンで上演することに。

そこで派生し生まれたのが今回上演する塩原、淺越コンビでの『笑の太字』でした。





さぁ長々と書いてきましたが、要するに僕にとってこの演目は当時、色々な出来事や要素の副産物の上で上演することになったな、という意識が強かったということです。

上演するならば絶対に面白いものにしなければならないという中で、その反面どこか自分の身体で作っている作品ではない、体重の乗っていない、とても消化不良で終わってしまった上演だった記憶があります。


あまり自分は過去の創作物について、冗談にならない本気のネガティヴを発信しないようにしているのですが、それは言わずもがな作り手の些細な思想や自意識なんかとは全く関係なく、上演された作品と、それを受け取ったお客さんの中に生まれたものの方が圧倒的に本物だぞ。と思っているからで。

作り手がどう思っていたかというのなんてノイズや蛇足になることもあるし、お客さんがどう受け止めたかとは関係がないだろうと思うからです。

余談ですが元・広島カープの天才打者前田智徳選手は、そのバッティング技術への意識の高さ故、ホームランを打ってもそれが納得のいく当たりで無ければ小首をかしげながらダイヤモンドを一周していたそうです。打たれた投手や、喜んで手を叩いたファンやチームメイトにしてみたらさぞかし複雑な心境だったでしょう。いや本当に余談だこれは。


しかしそれと反することを言いますが、同時に創作者の言葉を残すことも大事だと思っている…というより、これはもう僕の趣味や癖に近いものかもしれない。思考を、書いて、言葉にして、発信して整理するのがライフワークなのかも。

そうだ、これは僕の興行のブログだ。僕がやりたいことや書きたいことはどんどん書いていく。


さて話を戻しますが『笑の太字』に関しては上演時の評判や、話題や、実際に劇場で起こった笑い声や諸々の評価に反して、自分の中ではあまりいい思い出のない作品でした。


そういった自分の中で起こっていた様々なネガティヴな感情を払拭、精算したいと思うと同時に、やはり客観的に見ればこんなに面白い作品が、一回しか上演されてないなんてあんまりじゃないか!という叫びも込めて再演に踏み切った次第であります。


なんだかんだと書いてきましたが、そもそも面白さは折り紙つきで、かつ再演にあたってブラッシュアップされて更に面白くなりつつ、創作者としても圧倒的に納得のいくやり甲斐のある作品になるんだからこれは観ない手は無いでしょう。


もっと突っ込んだ話も書きたいなと思いつつ、いきなりゴテゴテなエントリになってしまうので今回はこの辺で。続きはどこかで発信しようと思います。


笑の太字、今回見逃したら本当もう二度と観られないかもしれないので是非お見逃しなく。

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